毎年冬場になると流行するノロウイルス感染症。激しい嘔吐や下痢で大変な思いをしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ノロウイルスは非常に感染力が強いウイルスであるため、保育園・幼稚園や学校などで集団感染が起こりやすくなってしまいます。
さらに、学校などで感染してしまったお子さんが家庭にウイルスを持ち帰ることで他の家族にも感染が拡がってしまうケースも多くみられるため、各家庭でのノロウイルス対策がとても重要になってきます。
このノロウイルス対策に次亜塩素酸の使用が有効であることが近年では知られてきています。
しかし、殺菌剤・消毒剤として非常に優れていると言われる次亜塩素酸ですが、ノロウイルス対策としてはどのように使用すれば有効なのかについてはまだまだご存じない方も多いのではないでしょうか?
今回は、その次亜塩素酸を使用したノロウイルス対策についてご紹介いたします。
ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス感染症は毎年12月から3月をピークにして全国的に流行するウイルス性の感染症です。日本では乳幼児から高齢者まで幅広い年代の方が感染してしまっています。
このノロウイルス感染症の主な症状としては、嘔吐・下痢などの急性胃腸炎症状があげられますが、その治療法としては、ノロウイルスに有効な抗ウイルス剤がないため症状をやわらげるような対症療法のみとなっています。乳幼児・高齢者や体力の弱っている方の場合、嘔吐・下痢による脱水や窒息には特に注意が必要です。
ノロウイルス感染症の感染経路としては、主に経口感染(食品、糞口)があげられます。糞便が手指を介して経口摂取される場合のことを特に糞口感染と言います。
この経口感染による感染経路について、以下にもう少し詳しくご説明したいと思います。
食品媒介感染
食品媒介感染には二つのケースがあります。
ひとつ目は、ウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝類を、生または加熱不十分な調理で食べることによって感染するケースです。
ふたつ目は、感染した方が調理をすることにより食品や食器・調理器具が汚染されてしまい、その汚染された物を食べることによって感染するケースです。
接触感染
感染した方の糞便・吐物およびこれらに直接または間接的に汚染された物が手指を介して口に入ることによって感染します。そのため、感染した方から排泄された糞便・吐物は、感染性のあるものとして注意することが必要になります。また、糞便・吐物だけでなくそれらによって汚染された物の処理の際にも注意することが必要です。
症状が消失した後も3~7日間ほど患者さんの便中に排出されるため、症状がなくなったからと言って気を抜かずに2次感染を未然に防ぐよう注意が必要です。
また、感染した方の手指についているウイルスがドアノブなどの家庭内設備・環境を汚染し、それに接触した手指を介して口に入ることによって感染するケースもあります。
飛沫感染・塵埃(じんあい)感染
ノロウイルスの飛沫感染とは、感染した方の下痢便や吐物が床などに飛び散り、その飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴)を吸い込むことによって感染することです。
ノロウイルスの塵埃感染とは、感染した方の下痢便や吐物が放置されていたり適切な処理がなされなかったりした場合、ノロウイルスを含んだ粒子が空気中を漂いそれを吸い込むことによって感染することです。
ノロウイルスの感染を防ぐために
ノロウイルス感染症とその感染経路についてご理解いただけたかと思います。
ここでは、以下に様々な場面における次亜塩素酸を使用した感染予防対策についてご説明したいと思います。
手洗い
手指を介した感染も多いことから感染経路を断つため、身近な感染防止策として手洗いの励行はとても重要になってきます。
普段から手洗いをしっかりと行うことが重要ですが、感染した方の糞便・吐物の処理後や調理前においてはより入念な手洗いが必要です。
水道水によるこまめな手洗いももちろん有効ですが、消毒殺菌効果が認められているという次亜塩素酸水の流水による30秒以上の手洗いが特に効果的であるという報告もあがってきています。
ウイルスの消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効だというのは良く知られていることだと思いますが、アルカリ性のため肌に触れると粘膜を傷めて手荒れするので手洗いには向いていません。
しかし、次亜塩素酸水は人にも環境にも安全なため手洗いにも安心して使用できます。
キッチンや調理器具の消毒
キッチンや調理器具は洗剤などを使用して十分に洗ったあと、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭くことでウイルスを失活化できますが、次亜塩素酸ナトリウム独特の刺激臭が残ってしまったり器具の材質によってはさびてしまったりという問題があります。
次亜塩素酸水はそれらの心配もなく人にも器具にも優しい除菌剤として使用することができます。
家庭内設備・環境の除菌
手指や調理器具などを清潔に保つことはもちろんですが、家庭内設備・環境(ドアノブ・手すり・トイレなど家族みんなで使用する場所や物)に付いているウイルスを取り除くことも重要です。
次亜塩素酸ナトリウムによる消毒は有効なのですが、やはり刺激臭や器具の腐食などの問題があります。
その点、次亜塩素酸水は人にも器具にも優しく、スプレーで噴霧することも可能なので気軽に使用できることに加えて、消臭効果も期待できます。
糞便・吐物や汚染された物の適切な処理
2次感染を防ぐためには感染した方の糞便・吐物や汚染された物の適切な処理が重要となります。
床などに飛び散った吐物などを処理するときには、使い捨てのエプロン・マスク・手袋を着用し汚物中のウイルスが飛び散らないように汚物をペーパータオルなどで静かに拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。拭き取りに使用したペーパータオルなどはビニル袋に密閉して廃棄します。
ノロウイルスは乾燥すると空気中を漂い、それを吸い込むことにより感染することがあるので、汚物は乾燥しないうちに速やかに処理しましょう。そして空気の流れに気を付けながら十分に換気することが重要です。
次亜塩素酸ナトリウムのように取り扱いに注意が必要であったり独特な刺激臭が強かったりということもなく、ノロウイルス除去に効果的な次亜塩素酸水。
次亜塩素酸水は有機物に接触するとすぐに反応してしまうため汚物が大量に残ったままの状態で噴霧しても効果がありませんが、汚物を取り除いて水拭きしてから噴霧することで有効的に殺菌することができます。
次亜塩素酸を上手に活用してノロウイルスを防ぎましょう
今回は、ノロウイルス感染症や次亜塩素酸を使用したその対策について説明いたしました。
それぞれのケースにおける次亜塩素酸の使用方法や有用性を理解することは、ご自身や周りの方々がノロウイルス感染を予防しようとするとき、大変役に立つのではないでしょうか。
次亜塩素酸を賢く利用してノロウイルス感染症におびえることなく、みなさんイキイキと健康な毎日をお送りください。
<参考>
厚生労働省『ノロウイルスに関するQ&A』
NIID国立感染症研究所『ノロウイルス感染症とは』
Wikipedia『微酸性電解水』
Wikipedia『次亜塩素酸水』