ノロウイルスをはじめとする様々な菌に効果のある「次亜塩素酸」。その高い除菌力から近年では特に注目を集めています。

この「次亜塩素酸」という名前を持つ成分として、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」のふたつが知られています。

「次亜塩素酸水」は次亜塩素酸を水に溶かしたもので、「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」は次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かしたものなので、実は全くの別物なのです!

今回は「次亜塩素酸水」と「事案塩素酸ナトリウム水溶液」の違いや次亜塩素酸の強力な除菌・消臭効果とそのメカニズムについて紹介したいと思います。

「次亜塩素酸」とは?

コトバンクの説明によると「次亜塩素酸」とは、

「化学式 HClO 。遊離の状態では存在せず,水溶液中でだけ安定である。塩素に水が作用すると生成する。最高濃度 25%水溶液は淡黄色,特臭あり。-20℃では数日間保存が可能である。徐々に分解して塩素,酸素および過塩素酸を生じる。酢酸よりも弱い酸であるが,強力な酸化剤で,ナトリウム塩は酸化漂白剤として重要である。」

と解説されています。

さらに加えて、「遊離の状態では存在せず,水溶液中でだけ安定である。」とあることから、「次亜塩素酸」=「次亜塩素酸水」と考えてしまって問題ないでしょう。

なお、厚生労働省による「次亜塩素酸水」の定義では

「本品は殺菌料の一種であり、塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液。」

となっています。

もう少し分かりやすく解説すると、

「塩素ガスを水に溶かすことで塩素分子の加水分解(水が作用して起こる分解反応)が起こり、強い酸化力のある『次亜塩素酸』が発生する」

ということになります。

なお、次亜塩素酸水はpH値によって殺菌力が違ってきます。

  • pH3まで(酸性)は、ほとんどが塩素ガス
  • pH4~7(弱酸性〜中性)では次亜塩素酸の成分が多く存在
  • pH8以上(弱アルカリ性~アルカリ性)になると次亜塩素酸イオンとなる

ちなみに、塩素ガスも次亜塩素酸も次亜塩素酸イオンも全てが殺菌作用を持っています。

しかし、塩素ガスは気体なので失活(活性化エネルギーが無くなる現象)が早い上に危険性のあるガスなので一般的には使用されません。

したがって、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンのふたつが除菌剤として活用しているのです。

「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」は全くの別物です!

名前が似ていることから混同されがちな「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」ですが、実は全くの別物なんです。

次亜塩素酸は水素原子と塩素原子が酸素原子に結合して作られた化合物であり、この次亜塩素酸を水に溶かしたものが次亜塩素酸水となります。化学式では「HClO」と表されており、そのpHは弱酸性~中性となります。

一方の次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、その名の通り次亜塩素酸ナトリウムを水に溶かしたものです。次亜塩素酸ナトリウムの化学式は「NaClO」となり、pHは強アルカリ性となります。

次亜塩素酸が不安定な物質であるため長期保存が難しいことに対して、次亜塩素酸ナトリウムは高濃度であれば比較的安定しているので長期保存に向いているという特徴があります。

加えて、次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性であるためタンパク質を溶かしてしまうという特性があります。この性質によって次亜塩素酸ナトリウムが肌につくとヌルヌルしてしまうのです。

また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に酸性の液体を混ぜると有害な塩素ガスが発生して大変危険です!取り扱いには十分注意しましょう。

「次亜塩素酸」の除菌・消臭効果

次亜塩素酸水と同様に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効成分も次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンとなりますが、同じ濃度で比較した場合には次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムの数十倍~数百倍もの殺菌力を持つとされています。

このことから、次亜塩素酸ナトリウムと比べて次亜塩素酸水には非常に強力な除菌・消臭効果があることがわかります。

次亜塩素酸は、アルカリ性が高くなると次亜塩素酸イオンとなり次亜塩素酸よりも殺菌力が弱くなってしまいます。

強アルカリ性である水酸化ナトリウム水溶液の有効成分は次亜塩素酸イオンであるため、次亜塩素酸水よりも殺菌力が弱くなってしまうと言うことになります。

「次亜塩素酸水」の除菌・消臭メカニズム

次亜塩素酸には強力な酸化作用があり、その力によって電子を奪われてしまった菌やウイルスは形を保つことができなくなります。

より具体的に補足すると、菌やウイルスの細胞壁・細胞膜・DNA・RNAなどを破壊しイオン透過性の障害を起こすことで菌やウイルスを不活性化させることによって次亜塩素酸は除菌・消臭効果を発揮するのです。

ちなみに次亜塩素酸も次亜塩素酸イオンも上記のメカニズムで除菌・消臭をしますが、次亜塩素酸の方が次亜塩素酸イオンよりも分子が小さいため、より強力な除菌・消臭効果を発揮します。

分子が小さい次亜塩素酸の場合には、菌やウイルスの細胞壁・細胞膜を通り抜け細胞内の組織を壊すことで菌やウイルスを殺すことができるのです。

一方の次亜塩素酸イオンの場合には、細胞壁を通り抜けることはできますが細胞膜を通過する事ができず、細胞壁と細胞膜の電子を奪って壊すことしかできないのです。

したがって、次亜塩素酸イオンを殺菌成分としている次亜塩素酸ナトリウムよりも、次亜塩素酸を殺菌成分としている次亜塩素酸水のほうがより強力な除菌・消臭があるのです。

家庭の様々なシーンで役立つ次亜塩素酸の消臭力

安全性の高い次亜塩素酸水は、家庭の様々なシーンでの消臭に役立ちます。

おすすめは、スプレーボトルに入れて使う方法です。

ゴミ箱やペットのトイレ・まくらやシーツ・靴など臭いが気になるものに直接スプレーすればOK!

ただし、次亜塩素酸には強い消臭力がある反面、持続力は無いのでこまめにスプレーするようにしましょう。

お部屋全体の臭いが気になる場合は、加湿器を使えば空間全体を消臭することもできます。

次亜塩素酸水を加湿器で噴霧する場合には、かならず次亜塩素酸水に対応した加湿器を使用し、適切な塩素濃度の次亜塩素酸水を使用するよう心がけましょう。

 

<参考>

・コトバンク

次亜塩素酸

・メディストサニテ株式会社

「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」の違いとは?

・Exclothes

次亜塩素酸とは?消毒の効果と化学的な殺菌メカニズムについて

・新時代化学株式会社

次亜塩素酸(HClO)の化学的特性と、コレスゴの除菌・消臭メカニズム