殺菌作用にとても優れているという『次亜塩素酸』。

店頭やネットなどで『次亜塩素酸』という名前を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

『次亜塩素酸』という語句のイメージから、「何か危険なものかな?」「取り扱いに気を付けなければいけないものかな?」というふうに感じられる方も少なくないかもしれません。

今回は、その次亜塩素酸を利用する際の問題とメリット・デメリットについてご紹介いたします。

次亜塩素酸とは

ブリタニカ国際大百科事典の中にある『次亜塩素酸』の項を見てみると、

「化学式 HClO。遊離の状態では存在せず、水溶液中でだけ安定である。塩素に水が作用すると生成する。酢酸よりも弱い酸であるが、強力な酸化剤で、ナトリウム塩は酸化漂白剤として重要である。」と書かれています。

Wikipediaの『次亜塩素酸』の項には、

「塩素のオキソ酸の1つで、塩素の酸化数は+1である。不安定な物質であり、水溶液中で徐々に分解する。次亜塩素酸および次亜塩素酸の塩類は酸化剤、漂白剤、外用殺菌剤、消毒剤として利用される。」とあります。

なにかちょっと難しい説明が並んでいますが、『次亜塩素酸』に殺菌作用があるということはわかりました。

この『次亜塩素酸』を利用するとき、どのような問題が起こってしまうのでしょうか。『次亜塩素酸』についてもう少し詳しく調べてみます。

次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水

『次亜塩素酸』という語句を有しているものに『次亜塩素酸ナトリウム』と『次亜塩素酸水』があります。

最近では店頭やネットで、『次亜塩素酸ナトリウム』や『次亜塩素酸水』と書かれている商品を見かけることも多くなってきましたよね。

どちらも殺菌作用に優れていて名前もとってもよく似ていますが、全く違うものなのです。

これら二つの違いについて以下に説明します。

次亜塩素酸ナトリウム

Wikipediaによると、「次亜塩素酸のナトリウム塩である。化学式はNaClO。水溶液はアルカリ性を示す。」とあります。

上水道やプールの殺菌に使用され、家庭用製品としても殺菌剤(洗濯用・キッチン用など)や塩素系漂白剤などに使われています。

次亜塩素酸水

Wikipediaによると、「塩酸または演歌ナトリウム水溶液を電気分解することにより得られる、次亜塩素酸(HClO)を主成分とする水溶液である。」とあります。

厚生労働省が示している厳しい基準を満たしたものは、食品添加物(殺菌料)として認可されています。認可されているものは3種類あり、強酸性次亜塩素酸水・弱酸性次亜塩素酸水・微酸性次亜塩素酸水という名称になっています。

次亜塩素酸水は、食材・機械・器具等の洗浄消毒のほかに手洗いなどに使用されています。

二つの違いと利用する際の問題

この二つの主な違いは水溶液のpH(水溶液の性質をあらわすもの)なのです。

次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性、次亜塩素酸水は酸性~弱酸性・中性のものが商品として多く流通しています。

次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性のため、室内において加湿器などで噴霧したりスプレーなどで噴射したりすると、人体に悪い影響を与えるおそれがあります。

また、次亜塩素酸ナトリウムを含む錠剤を用いた『空間除菌剤』を首から下げて使用するという商品が販売されていましたが、汗などで濡れることによって化学火傷を起こしてしまうという事故もありました。

さらに、強アルカリ性である次亜塩素酸ナトリウムを酸性洗剤と混ぜると有毒な塩素ガスが発生してしまいます。過去には浴室で洗剤を混ぜたことによる死亡事故も起こっています。次亜塩素酸ナトリウムを含んだ家庭用商品に「まぜるな危険」との表記があるように、取り扱いには細心の注意が必要になります。

このように、次亜塩素酸ナトリウムの利用については取り扱い方法を間違うと重大な事故につながってしまうという問題を含んでいると言えるのではないでしょうか。

次亜塩素酸のメリット・デメリット

次亜塩素酸ナトリウムにも次亜塩素酸水にもそれぞれメリット・デメリットがあります。

以下にそれらのメリット・デメリットについて説明します。

次亜塩素酸ナトリウムのメリット

価格は比較的低めなものが多く、ドラッグストアなどでも様々な商品が販売されていて入手しやすいです。

濃度が高いものならば、次亜塩素酸水と比べると安定していて長期保管することができます。

漂白性は次亜塩素酸水よりも強くなっています。

これらのメリットに加えて強い殺菌作用があるという利点もあります。

次亜塩素酸ナトリウムのデメリット

強アルカリ性の液体はタンパク質を溶かしてしまう性質があるため、直接肌に触れると肌表面のタンパク質が溶かされてヌルヌルとして荒れてしまいます。さらに次亜塩素酸ナトリウムには強い塩素臭がしてしまいます。

また、強アルカリ性のため取り扱いには細心の注意が必要となります。

次亜塩素酸水のメリット

安全性に関しては、急性毒性・反復投与毒性・遺伝毒性・皮膚累積刺激性試験・眼刺激性試験などの結果、異常がないことが確認されています。皮膚についたり飲んでしまったりしても問題がないくらい安全性は高いものとなっています。

殺菌消毒・消臭効果にとても優れています。

希釈せずに使用することもできるので、薄めるための水が必要ありません。

次亜塩素酸水のデメリット

次亜塩素酸水は反応速度がとても速いため、汚れたところに使用するとその汚れと反応してしまい除菌効果が出ないこともあります。

消費期限の短い商品であるため長期保存できません。

希望や用途に合った『次亜塩素酸』を

次亜塩素酸を利用する際の問題やメリット・デメリットについて説明してきましたがいかがでしたでしょうか?

それぞれのメリット・デメリットを理解することは、ご自身の希望や用途に合った次亜塩素酸商品を選ぶとき、大変役に立つのではないでしょうか。

利用する際の問題点について注意しながら、商品によって異なる特性を知って用途ごとに使い分けたりお気に入りの商品を見つけたりして、快適で安心・安全な除菌生活を送ってくださいね。

 

<参考>

コトバンク『次亜塩素酸』

 

Wikipedia『次亜塩素酸』

 

Wikipedia『次亜塩素酸ナトリウム』

 

Wikipedia『次亜塩素酸水』

 

厚生労働省『次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料』