毎年流行するインフルエンザやトイレから離れられなってしまう程の腹痛を引き起こすノロウイルス・小さなお子様への感染が怖いロタウイルスなど、特に冬場ではウイルスの感染症の恐怖が付きまといます。

一方夏場では、細菌が繁殖しやすくなるので、細菌性の胃腸炎に注意が必要です。

細菌もウイルスも目に見えないほど小さいので、どこに潜んでいるのかわからないのはもちろん対策を施したところで本当に死滅したのかを確認することもできません。手洗い・うがいなどによる予防も効果的ですが、できればウイルスや細菌とは一緒に暮らしたくないものです。

除菌効果のある洗剤などは数多く市販されていますが、この記事ではその中でも除菌効果の高い『次亜塩素酸』をご紹介します。

次亜塩素酸とは

次亜塩素酸は化学式HClOで表される物質です。

塩化ナトリウム水(食塩水)もしくは薄い塩酸を電気分解することや、次亜塩素酸ナトリウムに塩酸や炭酸を加えることによって生成されます。

こうして生成される水溶液はpH(酸性・中性・アルカリ性)によって除菌効果は異なりますが、除菌剤として市販されている『次亜塩素酸水』は弱酸性ですので、皮膚への影響が少なく安全なアイテムだと言えます。

厚生労働省の取り決めに従って食塩水や薄い塩酸の電気分解で生成された次亜塩素酸水は、食品添加物に認定されているほどに安全なのです。

その高い安全性と強力な除菌効果を利用して、次亜塩素酸水は食品を加工する時の消毒剤として活躍しています。

尚、お掃除の際の除菌目的に使われる次亜塩素酸水は食品添加物に認定される製法で生成されているわけではありませんが、その除菌効果と安全性は確かなものですのでご安心を。

ただしpHの調整に塩酸が使用されているものは、長期間保管していると強く酸性に傾いてしまうことがありますのでご注意ください。

原材料に「炭酸」と書かれているものを使用することをおすすめします。

次亜塩素酸ナトリウムとは異なります

キッチン器具の漂白やシンク掃除などで重宝する塩素系洗剤は、『次亜塩素酸ナトリウム』を主成分としています。

次亜塩素酸ナトリウムは次亜塩素酸の水溶液をアルカリ性にした時に生成されます。

アルカリ性であるため、手などに触れると皮膚が少し溶けてしまいぬるぬるします。

名前がよく似ていますが次亜塩素酸水ほど安全性の高い物質ではありませんので、この2つを混同しないようお気を付けください。

次亜塩素酸の除菌力

次亜塩素酸はどういった理由で高い除菌力を持っているのでしょうか。

『強力』と言われても、根拠がわからないと手放しでは安心できない方もいらっしゃるでしょう。

そこで次に、次亜塩素酸の成分や有効成分のはたらきについてご紹介します。

有効成分

次亜塩素酸の水溶液の有効塩素(除菌などに効果のある塩素)には、

  • 塩素(Cl2)
  • 次亜塩素酸(HClO)
  • 次亜塩素酸イオン(ClO-)

の3種類があります。

次亜塩素酸の水溶液中でのこれらの存在比率はpHによって変化します。

水溶液が酸性だとCl2が、弱酸~中性だとHClOが、アルカリ性だとClOが多く存在します。

次亜塩素酸水溶液の除菌効果がpHに左右される理由は、これらの有効塩素のはたらきが異なることにあります。

これらのうちHClOとClOはとても不安定な物質で、ほかの物質を酸化させやすい特性を持っています。

この特性が、『次亜塩素酸水』と『次亜塩素酸ナトリウム』の強力な除菌力へとつながっています。

さらに電気的に中性であるHClOの場合は、ClOでは届かない細菌の細胞内部やウイルスの遺伝子まで浸透して攻撃します。

除菌のメカニズム

次亜塩素酸がどのようにして細菌やウイルスを攻撃していくのか詳しく見ていきましょう。

 

細菌の場合

細菌は、外側から内側に向かって細胞壁・形質膜・細胞質や核酸の順にできています。

次亜塩素酸イオンは細胞壁までしか攻撃できませんが、サイズが小さく電荷を持たない次亜塩素酸はさらに内側まで浸透し核酸などを直接酸化させて死滅させます。

 

ウイルスの場合

ウイルスには、エンベローブと呼ばれる膜を持つものと持たないものがあります。インフルエンザウイルスはこれを持っており、ノロウイルスは持っていません。

エンベローブを持たないウイルスは、それなしでも生きていけるほどに殻が強いため死滅させにくいです。

アルコール消毒ではエンベローブを破壊することはできるためインフルエンザウイルスに対して有効ですが、ノロウイルスなどの強い殻を壊すことはできません。

一方で次亜塩素酸は、ノロウイルスの殻を透過して内部にある遺伝子を破壊してしまいます。

次亜塩素酸が有効な細菌・ウイルス

ここまで、次亜塩素酸が強力な除菌効果を持つ理由とメカニズムをご説明いたしました。

しかし次亜塩素酸は、具体的にどれほどの菌を死滅させることができるのでしょうか?

厚生労働省が公表している実験結果では下記の菌への効果が認められています。

  • 大腸菌
  • 黄色ブドウ球菌(食中毒・肺炎・髄膜炎などを起こす菌)
  • MRSA(抗生物質に耐性のある黄色ブドウ球菌)
  • サルモネラ菌(食中毒・チフスを起こす菌)
  • 緑膿菌(菌血症・敗血症を起こす菌)
  • レンサ球菌(扁桃炎・丹毒・髄膜炎を起こす菌)
  • 枯草菌(強い耐性のある菌で納豆菌はこの一種)
  • カンジダ(カンジダ症をおこす菌)
  • 黒コウジカビ(普通のカビ)

枯草菌は『芽胞』という強靭な構造を持つ生命力の強い菌ですが、次亜塩素酸はそんな菌ですら死滅させるほどの威力を持っています。

また、同じく芽胞を持ち食中毒の原因になるセレウス菌に対する効果を認めている研究もあります。

一方でウイルスへの効果を見てみると、次亜塩素酸によるノロウイルス・インフルエンザウイルス・B型肝炎ウイルス・ヘルペスウイルスの不活性化が確認されています。

使い方にはご注意を

次亜塩素酸は強力な除菌効果を持っており、様々な細菌やウイルスを死滅させることができます。ところが、次亜塩素酸は使用方法を間違えると効果が半減してしまうのでご注意ください。

次亜塩素酸はとても不安定で反応の速い物質ですので、汚れがあるとそちらと反応してしまい除菌の効果が薄れてしまいます。除菌したいものや場所は、あらかじめある程度お掃除してから使用しましょう。

次亜塩素酸による徹底除菌を行い、感染症と無縁な生活を手に入れてください。

 

<参考>

solmind.com

Wikipedia:次亜塩素酸水

備える.jp:次亜塩素酸水の効果・殺せるウイルスや細菌の種類

5分で分かる!次亜塩素酸水:次亜塩素酸水の除菌力

(pdf)

厚生労働省による次亜塩素酸の規格改定案

添加物評価書 次亜塩素酸水