寒いこの時期に拡大するノロウイルス感染。「マスクをしているから大丈夫」「アルコール除菌したから大丈夫」と思っていませんか?今回は意外に誤解の多いノロウイルスの特性について、その基本をおさらい。ウイルスが失活化する条件を整理し、それに向けた感染防止の対策を紹介していきます。

 

ノロウイルスの特徴

ノロウイルスは直径 30~38nm(ナノメートル/1nmは0.000001mm)のとても小さい粒子状のウイルスで、電子顕微鏡でしか見る事が出来ません。

カプシドというたんぱく質の殻の中に遺伝子情報を持つ構造で、人の体内に入ると細胞に寄生。その細胞内で増殖していきます。増殖したウイルスは元の細胞を飛び出し、再び他の細胞に寄生することで、更なる増殖を続けます。元の細胞を飛び出す際、細胞の一部をウイルスの膜としてまとうものと、まとわないものに分かれますが、ノロウイルスはまとわないタイプです。この膜の事を「エンベロープ」といいます。

 

ノロウイルスに有効な対策

エンベロープを持つウイルスとして有名なのがインフルエンザです。エンベロープはアルコールに弱いので、インフルエンザウイルスにはアルコール除菌剤が有効とされています。ところがノロウイルスはエンベロープを持たないので、アルコール除菌剤では感染性を失わせる(失活化させる)事ができないとされています。
では、ノロウイルスには何が有効なのでしょうか?

先述のように、ノロウイルスの殻であるカプシドはたんぱく質。つまり、熱に弱いという特性を持っています。厚生労働省は失活性化できる消毒方法として、加熱や熱湯、高温スチームを使った熱消毒と、殺菌効果の高い次亜塩素酸ナトリウムを使った消毒方法を推奨しています。

ではそれぞれの使用場面と用法を見てみましょう。

 

次亜塩素酸ナトリウム

ノロウイルスは、胃液の程度の酸度(pH3)や飲料水に含まれる程度の低レベルの塩素には、抵抗性を持っているため失活化させることはできません。そこで次亜塩素酸ナトリウムでしっかり消毒することが大切です。

最近では、次亜塩素酸ナトリウムを用いた商品も一般に広く販売されるようになりました。衣服や調理器具は濃度が0.02%の希釈液で消毒し、糞便や吐しゃ物の処理には、濃度0.1%の希釈液で浸すように拭きます。特に吐しゃ物は、思ったよりも広範囲に飛沫が飛ぶ場合が多いので、注意が必要です。東京都健康安全研究センターの調べでは、床から1mの高さから吐いた場合、カーペットでは最大1.8m、フローリングでは最大2.3mも飛び散るそう。広範囲の消毒の必要性がわかりますよね。次亜塩素酸ナトリウムには金属を腐食させる作用もありますので、金属部分を消毒した後は薬剤をしっかりふき取る事をお忘れなく!

次亜塩素酸ナトリウム原液が自宅にない場合は、家庭用の塩素系漂白剤でも代用できます。次亜塩素酸ナトリウムは塩素系漂白剤の成分。多くの市販品は原液濃度5~6%ですが、製品ラベルなどで今一度濃度を確認しましょう。なお、原液濃度6%の一般的な塩素系漂白剤を使って衣服や調理器具を消毒する際は、原液20mlに対して水6L、糞便や吐しゃ物の処理には、原液100mlに水6Lで希釈液を作ります。塩素系漂白剤は簡単に準備でき、ウイルス対策の効果も高く便利な一方で、使用時には注意が必要です。例たとえ薄めたものでも、目や肌、気管に悪影響を与える恐れがあるので、マスクや手袋、ゴーグルなども準備しておくと良いでしょう。これらを使用することは、汚物を処理する際の二次感染を防ぐ観点からもおすすめです。使用環境によっては塩素ガスが発生する場合がありますので、製品に記載されている「使用上の注意」を必ず確認し、特に小さなお子様などのいる家庭では保管場所にも気を付けましょう。

 

加熱消毒

天然の二枚貝などノロウイルスの汚染が疑われる食品は、中心部を85~90℃で90秒間以上加熱してから食しましょう。また、消毒されていない水にもウイルスが含まれている恐れがありますので、心配ならであれば一度沸かした水を使うようにしましょう。

 

熱湯・高温スチーム消毒

次亜塩素酸ナトリウムを使えない場合は、熱湯や高温スチームを使って消毒します。ノロウイルスは、60℃程度の熱には抵抗性を示すので、85℃以上で少なくとも1分以上消毒する必要があります。カーペットや布団などすぐに洗濯できない場合は、よく乾燥させてスチームアイロンや布団乾燥機を使うと良いでしょう。

乾燥した空気中ではノロウイルスが浮遊しやすくなるので、特に冬のこの時期は注意が必要です。ノロウイルスはその感染力の高さも有名。少量のウイルスでも感染し発症する場合があるので、その特性をきちんと理解し、有効な対策を心掛けたいものです。

 

<参考>

国立医薬品食品衛生研究所「ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書」「ノロウイルスとは

大阪府感染症情報センター「ノロウイルス対策としてのアルコール系消毒剤について

厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A

東京都健康安全研究センター「ノロウイルス対策緊急タスクフォース最終報告」「ノロウイルスと食中毒」「防ごう!ノロウイルス感染

日本食品分析センター「ウイルスについて〜ウイルスと細菌の違い

Weblio辞書「ウイルスの不活化