寒さが厳しい日が続いていますね。最近では感染症予防や寒さ対策のために、街中で多くの人々がマスクをしているのを見かけます。しかし、なぜ冬になるととウイルスは拡散しやすくなるのでしょうか。みなさんはウイルス拡散の原因を本当にご存知ですか?

今回は、なぜウイルスは冬に拡散しやすいのか、その原因を整理し、拡散を防ぐためにやるべきことを考えていきます。

 

低温・低湿はウイルスにとって好条件

冬は気温と湿度の両方が下がります。実はこの低温と低湿こそ、ウイルスの拡散に大きく影響を与える原因なのです。その理由は2つ。

1つ目は、ウイルスが寒冷乾燥に強い事です。例えば毎年冬に大流行するインフルエンザウイルスは、低温・低湿の環境下で生存率が高くなります。つまり、寒い時期はウイルスが活発に活動しやすくなる環境が整っているのです。

そしてもう1つはウイルスの空中浮遊率が高くなる事。人の咳やくしゃみと一緒に排出されたウイルスは、水分の重さで次第に床に落下します。ところが乾燥で水分が蒸発するとウイルスが軽くなり、空気中に浮遊しやすくなるのです。

2006年12月に東京都豊島区内のホテルで起こったノロウイルスによる集団感染は、空中にノロウイルスが飛散し続け、感染が広まった例として有名です。このように、冬の環境はウイルスの生存率を上げ、空中浮遊率も上げてしまうのです。

 

低温・低湿は人にとって悪条件

一方、人は冬になると体内機能が低下しやすくなります。空気の乾燥や水分補給を忘れがちになることで鼻・喉・気管等の粘膜の働きが悪くなり、ウイルスが体内に侵入しやすくなります。低温・低湿で活発化するウイルスとは逆に、人は感染しやすい状態になっているのです。

 

対策1 低温・低湿を防ぐ

そこで、まず身近にできる感染対策として挙げられるのが、湿度と温度を上げること。ウイルスが活動しにくく、そして人の体内機能が働きやすくなるよう、身の回りの環境をコントロールしましょう。

例えばインフルエンザの場合、室温は20℃以上、湿度は50~60%に保つのが有効だとされています。温度と湿度を上げるには暖房器具や加湿器を使いますが、使い方には工夫も必要です。エアコンは温度調節に便利ですが、使い過ぎると空気が乾燥し低湿になりやすくなってしまいます。また湿度を保つために加湿器を使う事も有効ですが、こちらも使いすぎてしまうと結露やカビが発生しやすくなります。さらに、湿度が70%以上になると過敏性肺臓炎というアレルギー性の肺の病気になる場合もあるので、やりすぎにはくれぐれも注意しましょう。温度計や湿度計を準備する、こまめに換気する、乾燥しにくい暖房器具を使う、衣服の着脱で温度を調節するなど、様々な方法を柔軟に取り入れながら、適温・適湿を長く保てるように心がけましょう。

 

対策2 感染を防ぐ

ウイルスは感染者の咳やくしゃみに多く含まれているので、1人でも多くの人が「感染しないように心がける事」も拡散防止にもなります。感染を防ぐには、マスク、手洗いを励行し、栄養や睡眠をしっかり摂って免疫力を高める事が大切です。

マスクの装着方法にもポイントが。自身にあったサイズのマスクを選び、針金の部分を鼻の形に合わせ、顎までしっかり覆うようにします。マスクはウイルスの侵入を防ぐだけでなく、気道の乾燥を防ぐ効果もありますので、屋外での湿度対策としてもおすすめです。

そして、手についたウイルスを落とすにはしっかりとした手洗いが有効です。指先や指の間、親指、手首は忘れやすいので、特に注意して洗うようにしましょう。

さらに冬の時期は、特に栄養の良い食事と十分な睡眠、適度な運動に意識を向け、免疫力を高めるように心がけましょう。体の健康には腸内に善玉菌を増やすことも重要で、乳酸菌は腸内の免疫細胞を活性化させるのに有効です。ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆、漬物等、ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品を取り入れるとよいでしょう。それ以外にも、適正な体重を保ち、ストレスを溜めないようにする事も免疫力を高めるのに有効です。

 

対策3 各ウイルスの対策方法を知る

例えばインフルエンザにはワクチンがあり、予防接種も有効な手段とされています。また、手洗いできない環境にいるときには、アルコール除菌もよいとされています。一方ノロウイルスはアルコール消毒の効果がなく、熱消毒や次亜塩素酸ナトリウムを含む薬剤で殺菌処理する事が必要です。このようにウイルスの種類によって有効な対策が違うので、正しい対策を知る事も大切です。

 

ウイルスは抗生物質が効かず、適切な処置をしないと重症化することもあるため、感染しないよう心がけ、しっかり対策する事が大切です。対策は簡単にできるものが多いですが、ついつい忘れてしまいがち。習慣化できるように玄関にマスクを置いておく、好みの香りのハンドソープを使う等、ちょっとした工夫をしてみてもよいかもしれませんね!

 

 

<参考>

厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」「平成29年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」「e-ヘルスネット 腸内細菌と健康

政府インターネットテレビ「徳光・木佐の知りたいニッポン!~正しく知れば怖くない!感染症予防」「インフルエンザ予防のために~手洗い・マスクのススメ」「インフルエンザ 看病する時 される時

日本医師会「ロボットくんのからだの旅 第4話最近とウィルス

東京都健康安全研究センター「ビル利用者のインフルエンザの予防について 建築物衛生のページ

感染症情報センター「ノロウイルスの感染経路」「Mホテルにおけるノロウイルスによる集団胃腸炎の発生について