寒空の下、つきたての餅をみんなで頬張る―。

日本の冬の風物詩の1つ「餅つき大会」は、いかにもこの季節らしいほっこりするイベントです。一方で、「餅つき大会」でノロウイルスの感染が拡大したというニュースを目にすることも。そこで今回は、この「餅つき大会」でノロウイルス感染を引き起こさないために気を付けるべきことを考えていきます。

 

ノロウイルスについて

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は一年を通して発生していますが、特に12月~3月は全国的な流行のピークを迎えます。感染経路のほとんどは、ウイルスに汚染された飲食物を摂取する経口感染。しかし手指を介してウイルスが口に入る接触感染や、乾燥により空気中に浮遊したウイルスが口に入る空気感染という感染経路もあります。

ノロウイルスに感染すると24~48時間の潜伏期間を経て、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱(37℃~38℃)等が見られ、これらの症状が1~2日続きます。ただし症状の重さには個人差があり、軽い風邪の症状で終わる人や、症状が全く出ないという人もいます。

 

ノロウイルスと「餅つき大会」

「餅つき大会」はノロウイルスの対策が難しいイベントと言われています。主な理由は3つ。開催時期が流行期にあたる事、不特定多数の人が参加するので衛生管理の徹底が難しい事、そして、餅の加熱状態を保つ事が難しい事。楽しく「餅つき大会」を終わらせるためには、感染のリスクが高い事を十分認識し、徹底した対策を関係者全員で行うことが大切です。

 

作業者の選定

大会関係者は作業者の体調をしっかり把握し、間違っても感染者が作業をしないように留意しましょう。不特定多数の人が餅に触ると、それだけノロウイルスに感染するリスクも高まります。作業人数は、可能な限り少人数に限定するのがベター。体調の悪い人はもちろん、1か月以内に体調を崩した人や、何らかの感染症の疑いのある人が餅や調理器具等に触れる事のないよう管理しましょう。

しかし目に見えないウイルスは、気が付かないうちに手や服、髪などについている可能性も。また感染していても症状が出ていない人もいるので、作業者を念入りに選出したところでウイルスが混入してしまう恐れもあります。そこで大切なのが作業者の衛生対策です。

 

作業者の衛生対策

作業者はマスクやエプロン、三角巾を着用し、しっかり手を洗いましょう。過去の事例を見ると、ノロウイルスが蔓延した理由に「作業者の手洗いが徹底されていなかったこと」がありました。手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法は、石鹸やハンドソープでしっかりと手洗いする事。石鹸自体にはウイルスを死滅させる効果はありませんが、手の皮脂や汚れを落とすことでウイルスが手からはがれやすくなる効果があるそうです。手を洗う際は爪を短く切り、指輪などの装飾品を外し、石鹸を十分泡立て洗いましょう。手洗い用のブラシなどがあれば尚良し。洗い終わったら温水の流水でしっかりすすぎます。手洗いには30秒以上をかけ、2回洗うようにし、洗い終わったら清潔なタオルで拭きます。拭いた後は何も触らず、すぐに新品の手袋を装着して作業に入るようにしましょう。手袋の素材によっては餅がくっつきやすく、やけどしやすいものがありますので準備する際に注意してください。

 

器具や容器の洗浄

きねや臼、手返しの水を入れておくボウルやバット等、人の口に入るまでに餅が触れる可能性のある器具や容器は、すべて洗浄し消毒をしておきます。容器や調理器具などの消毒には、塩素濃度が200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用可能)が口に入っても安全です。また大型のものの消毒には熱湯も有効。85℃以上で1分以上の加熱をするとノロウイルスの感染性を失活化させることができるので、きねや臼、まな板などには熱湯消毒を行いましょう。

 

より安心な提供方法の工夫

ふかされた餅は、出来上がった直後は高温ですが、時間が経つにつれ徐々に温度が下がってしまいます。温度低下による感染のリスクを避けるためには、お雑煮やお汁粉にして提供するのもお勧め。温かい食事は、寒い中参加してくれているみなさんにもきっと喜んでいただけるはずです!

 

近年ではノロウイルスの感染リスクを恐れ中止にするところも増えている「餅つき大会」。しかし依然として人気のある伝統行事なので、継続を望む声も多くあります。そこで大切なのが感染症対策。ノロウイルスについては食品衛生の基本対策でもあるので、専門家などから指導を受けつつ徹底した対策を施したいものです。せっかくの「餅つき大会」、みんなの笑顔で溢れる楽しい一日にしたいものですね!

 

 

<参考>

厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A

国立感染症研究所「ノロウイルス感染症とは

NHKアーカイブス「餅つき大会のノロウイルス対策

政府インターネット「ノロウイルス食中毒の予防について

朝日新聞(デジタル)「ノロウイルス流行、もちつき大会中止相次ぐ